子供のけが 治療の仕方 5つの原則

ケガをした子供の縫合は難しいと思われています。
ところが2~3才の子供でも、実際には穏やかな雰囲気のままで縫合を行うことが可能なケースが多いのです。
小児形成外科分野指導医として培った私のテクニックを御紹介します。

子供の治療は押さえつけるものだと思っていませんか?

小児が怪我をしたとき、縫うことが必要な場合があります。その際、多くの医師・看護師はバスタオルやネットで有無を言わせずにぐるぐる巻きにして押さえつけます。初めて見た方にはかなり衝撃的な光景です。さらに、暴れる子供を押さえつけるために上に馬乗りになっておさえつけたりします。

押さえたら苦しくて大暴れします!

押さえつけて治療している間、当然ながら子供は泣き叫び大暴れします。その際、なんと言って泣いてると思いますか?「痛い!」と言って泣いているのではありません。「怖い!」「苦しい!」「暑い!」といって泣くのです。そもそも、局所麻酔さえ終われば、治療中は痛くは無いのです。子供は押さえつけられる恐怖心でパニックになります。

子供の治療のテクニック

1.子供も話せばわかります。

怪我をして血を流していれば、子供も治療をしなければいけないことは理解できます。個人差がありますが、概ね2歳以上になると言葉がかなり理解できますから、話せばわかります。ですから、治療をしなければいけないことを保護者ではなく、子供本人に理解してもらい、子供の方から治療を希望させます。「転んで血がでちゃったね。痛かったね。血出てるの先生が治してあげようか?」などと優しく語りかければ、多くの場合「うん」や「はい」という返事が返ってきます。そうなると、子供が治療を望んだのですから、その後の処置がスムーズになります。

2.話すときには子供の目線に合わせます

上から話しかけるのではなく、かがんで子供の目線の高さに合わせて話します。子供はパーソナルスペースが大人より小さく狭いので、顔を近づけてゆっくりとわかりやすく話をします。女児・男児でも違いますし、性格によっても違うのでその子にあった話し方を見つけるのは経験が必要かもしれません。

3.痛いことをするときにはしっかりと説明します

縫合前の注射は当然痛みを伴います。色々テクニックはあるのですが、痛みはゼロにはなりません。その際、ちゃんと「痛いことをすること」、「その後、痛くなくなること」をしっかりと説明します。そのことで、”この先生は嘘はつかない”ということを理解してもらうことができ、信頼関係を得るための機会にもなります。ただし、余計な恐怖心を持たせないように、針を見せないことは大切です。また、注射の時に短時間、顔や腕などを支えることは事故防止の為にも多くの場合で必要だと御理解下さい。

4.絶対に嘘をつかないで下さい

子供を絶対にだましてはいけません。「痛くないよ」とか「すぐ終わるよ」などと声をかけがちですが、嘘をついてはいけません。その後の信頼関係が無くなり、治療に支障が出ます。もちろん、本当に痛くないときや早く終わるのならOKですが、主治医以外が言うべきことではないと考えています。保護者や周りの大人が、状況が分からない時にその様な声かけをすることがないよう心がけて下さい。

5.適度な声かけをして下さい

共感の声かけはOKです。「怖かったけれど頑張ったね」とか「もう泣かなくても大丈夫だよ」などは良いですね。気を紛らわせるために好きな食べ物の話、幼稚園や保育園の話題なども良いです。子供に人気のアニメの話など興味がありそうなことを話してみましょう。泣き疲れた後や治療の後は安心して寝てしまうことも多いので、様子をみながら声かけをしましょう。

様々なテクニックを駆使します

私の場合、2歳以上の子供の70~80%は上記のような方法を用いることで、ほとんど押さえないで縫うことが可能です。しかし、性格や理解力も様々ですし、過去の病院での嫌な経験や事故のショックからパニックになっている子供では説得出来ないこともあります。
診察時には泣き疲れて寝てしまっている子供も多く、寝起きは大抵不機嫌になるため説得が難しくなる場合や、ケガをした翌日以降、出血が止まり子供が治療の必要性を感じなくなっている場合も、治療に難色をしめすときがあります。
受診する前に「注射はしない」「痛いことはしない」などと約束されている場合も、痛い麻酔の注射をすることを子供が受け入れてくれなくなる可能性があります。
ごく稀ではありますが、縫合を試みることのリスクが高いと判断して縫合しないこともあります。
(暴れる子供に無理に縫合を試みることで針を目に刺してしまうリスクや、皮膚を更に傷つけてしまうリスク等があります)
基本的には優しく対応した方が良いのですが、状況によっては叱ることが必要な場面がありますし、呼び方もちゃん付けで優しく呼ぶ方が良い子もいれば、呼び捨てにした方が良い子もいます。
麻酔をしてすぐに縫合した方が良い場合もあれば、少し待った方が良い場合もあります。

どの様な方法でアプローチするのが適切かという見極めには経験が必要です。
縫合時に上手くいけば、抜糸も簡単ですが、縫合時に恐怖心を植え付けると抜糸でさえ再度押さえることが必要になることもあります。
病院での治療がトラウマになっていると、小学生になっていてもパニックになる子供もいますから、絶対の方法はありません。
ですが、最初の対応を適切に行えば、かなりの割合で穏やかに治療をすることが可能なのです。

ケガに限らず、大学病院で全身麻酔の手術を推奨される場合でも、当院では局所麻酔での治療が可能なケースが多くあります。
御子様のケガ、手術やレーザー治療などでお悩みの方は、是非一度当院にご来院下さい。

2020年7月6日ブログケガ,外傷

Posted by 中野 貴光