シミ(日光性・老人性色素斑)

お肌のシミ、気になりますよね。女性は気になると思いますが、男性も老けて見えたりするので気にしている方が実は多いのです。
一般にシミというと日光性・老人性色素斑や肝斑そばかすなど色々なものを含める傾向がありますが、それぞれ全く別のものです。
原因が異なれば、治療方針も異なります。
そこで、ここでは最も一般的なシミである”日光性・老人性色素斑”について説明します。
日光性色素斑も老人性色素斑も同じ症状に対してもちいられる病名で、紫外線によるシミの代表格です。
教科書的には老人性色素斑という呼び方をします。しかし、20代でもでてきますから”老人性”という表現は正しくないと思われるので、私は日光性色素斑という呼び方の方が良いと考えています。
形状は、顔や手の甲、腕など、日光によくあたる部分にできる茶色いシミで、形は不定形、米粒位の大きさから5cmほどにまで及ぶことがあり、単発のことも多発することもあります。最初は色が薄く目立ちませんが、少しずつ濃くはっきりしてきます。
20代から発症することもありますが、60歳以上では必発といっていいほど一般的なシミで、シミのため美容皮膚科外来を受診されるかたの中で最も多いのが日光性色素斑です。

シミの原因

シミの原因は基本的には紫外線による肌のダメージの蓄積です。
ダメージが蓄積することにより、表皮内のメラニン色素の産生が高まります。10代の頃には肌がどんどん生えかわるので、ちょっとメラニン色素が産生されても表皮がアカとなって生えかわる際にすっかり落ちてしまいます。しかし、紫外線によるダメージと加齢によって、肌の生えかわりが遅くなっていくと、だんだん追いつかなくなっていくのです。

何故、シミはだんだん濃くなるのか?

いくつかの理由が考えられますが、実はまだ正確にはわかっていません。ですが、これが理解できないとどうやってシミを治療すれば良いのか判らないのです。そこで、考えられている理由を挙げます。

1.肌の生えかわりが徐々に遅くなるから。
これは、少しは関係あるかも知れません。肌の生えかわりが遅くなれば、当然メラニン色素がいっぱい入った表皮が増えるので濃くなります。でも、皮膚の生えかわりは4倍にも5倍にも遅くなるなんてことはありません。ちょっとは関係するでしょうがメインの原因では無いはずです。
2.メラニンの産生が多くなるから。
もちろん、これは直接の原因なのですが、では何故徐々にメラニンの産生が多くなるのでしょう?実は、シミの部分の皮膚では光老化を起こした表皮角化細胞で色素細胞を活性化するET-1というものを作りやすくなっています。その為にメラニンが作られやすくなるのです。
3.日光性色素斑は良性の腫瘍だから、徐々に増大する。
日光性色素斑は表皮のケラチノサイトと呼ばれる細胞の腫瘍性の変化と言われております。ですから、日光性色素斑が腫瘍であると書いてあるクリニックのHPがあります。しかし、日光性色素斑は本当の腫瘍とは考えられておりません。もし、腫瘍ならば美白剤で一旦しみが薄くなったとしても皮膚の生えかわり周期が1周すると元通りになるはずです。ですが、実際には一旦薄くなったシミが2ヶ月で元通りになるわけではありません。
4.メラニンが多い皮膚はそれだけ紫外線を吸収するから。
じつは、これも原因ではないかと考えられます。紫外線を浴びるとメラニン色素が産生されるのは、メラニン色素で紫外線を吸収することで、皮膚を保護する能力が働くからです。(メラニンがあまり産生されない白人のひとには皮膚癌がとても多くなります。)ですが、吸収するということは、そこで何らかの反応を起こしているということです。その刺激でさらにメラニンを産生しやすくなるというのが、シミが濃くなるメカニズムではないかと考えられます。

実際、外で活動することが多い人はシミがどんどん濃くなりますよね。子育て中にシミが濃くなったという人はとても多いのです。
こう考えると、シミが出来てしまった後でもUVケアをする事の重要性がわかりますね。
肌のダメージの蓄積だけが原因なら、レーザーなどでシミをとっても、長年の肌のダメージ自体は回復しないはずですから、皮膚の生えかわりの周期が終わったら元に戻ってしまうはずです。ですが、実際にシミにレーザーは効果的です。

”レーザーが効果的な理由はメラニンを産生するメラノサイトという細胞が破壊されるからではないか?”
という考えも当然でてきますよね。ところが、そうではありません。メラノサイトはメラニンを産生した後はまわりの表皮細胞にメラニンを放出し、自分自身はメラニン色素を保持しません。勿論、今まさにメラニンを産生しているメラノサイトは中にメラニンが入っていますからレーザーで破壊される可能性がありますが、そうすると、実はそこが白く抜けてしまうのです。通常、レーザーでシミをとってもそこが逆に白くなってしまうということはありません。つまり、メラノサイトが破壊されるからシミが治るのではないと考えられるのです。
シミの部分のメラニンを作りやすくなっている異常な表皮角化細胞自体を除去することで、メラノサイトにメラニンをつくらせる信号が沢山でるのを止めるのが、シミがレーザー治療で良くなるメインの理由と考えられます。

シミの治療

シミの治療方法は色々あります。でも、シミを治療したけど再発したとか治らなかったという話はよく聞きますよね。
何故シミが出来て、それぞれの治療法が何をターゲットにしているかを理解し、それに対する対策を練って治療する医師とそうでない医師では治療効果に差が出て当然です。残念ながら、1つの方法でどんなシミでも治療出来る方法というものはありません。
それぞれの状態に応じて治療法を選び、その反応を評価して適切な組み合わせで治療を行っていくことが必要です。

レーザー治療

シミの治療法としてもっとも代表的な方法です。QスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーなどが一般的に使用されます。これらはQスイッチという特殊な方法でナノ秒という超短時間にレーザーを照射し、光イオン化作用によりメラニン色素を破壊します。実は、表皮のメラニン色素をとるだけなら他のレーザーでも可能なのです。しかし、Qスイッチレーザーには超短時間で照射することにより、メラニン色素から周囲にレーザーによって発生する熱が伝わって周囲にダメージを起こす前に照射が終わるという利点があります。その為、軽いやけどの様な状態にはなりますが、傷跡を残さずにシミを治療することが可能なのです。
レーザーについての詳しい話は[教えて!中野先生] レーザーってなに?を参照して下さい。

IPL・フォトフェイシャル治療

IPL(フォトフェイシャルはIPLの一種です)という治療もレーザーと同じように光をあてて治療します。
レーザーとの違いは、
1.特定の波長の光ではなく、色々な波長の光が混ざっている
2.照射時間がナノ秒ではなくミリ秒であり、長い
ということです。様々な光が混じっていることで、メラニン色素だけがターゲットではありません。また、照射時間が長いことによりメラニン色素を破壊するエネルギーを与えると周囲の組織にも熱が伝わりダメージを受けてしまいます。なので、目的はメラニンの破壊ではありません。
照射により、皮膚の生えかわりが活性化され、メラニン色素を含んだ皮膚が剥がれます。薄いシミはレーザーでは効きにくいことがありますが、IPLでは直接のターゲットでは無いため、薄くなることが期待できます。レーザーよりもシミ自体をとる効果は低くなります。しかし、レーザーはかさぶたのようになるのであまり多くのシミを同時に治療するのはつらいのですが、IPLでは照射後もそのまま化粧が出来ますし、顔全体に照射することが可能という利点があります。痛みも少ないです。
その他の利点として、様々な光が混じっていることで、コラーゲンの産生を促して肌に張りが出るなどの効果も期待できます。
欠点としては多くの場合にシミが充分に薄くなるまでには複数回の治療が必要なことがあげられます。

内服治療

ビタミンCが最も一般的に使用されます。シミに対してビタミンCには2つの効果が期待されます。
1.メラニン色素自体の色を薄くする。
ビタミンCにはすでに産生されたメラニンの色を薄くする効果があります。無くなるわけではありませんが、薄くなります。
2.メラニン色素の産生を抑制する。
優れた抗酸化力により、メラニン色素自体の産生を抑制します。
その他にもメラノサイトの活性化を抑制するトランサミン(トラネキサム酸)やメラニンの産生を抑制するL-システインなどがあります。ビタミンCは水溶性のビタミンですから、安心して飲むことが出来ますね。
なにはともあれ、ビタミンCの内服はほぼ必須と考えて良いでしょう。
果物や、野菜でとるという考えもあるでしょうが、ビタミンCの錠剤に含まれている量が200mgとすると、同じ量をとるのにレモンなら200g、苺なら300g、ブロッコリーなら400g必要です。さらに、ビタミンCは2~3時間で尿で排泄されてしまうので、それを1日3食とることが必要です。食事からだけで十分な量のビタミンCをとることは難しいですよね。バランスの良い食生活は重要ですが、サプリメントも活用して下さい。

外用治療

軟膏やローションなどを使用するのが、外用治療です。内服したものは全身に行きますから、シミへの効果はわずかです。でも、塗るという方法なら、シミのある皮膚のそのものに効果がでます。
ビタミンC
ビタミンCの効果は内服で述べたとおりです。しかし、肌に塗るのに普通のビタミンCをつかってはいけません。リン酸アスコルビン酸ナトリウムやリン酸アスコルビン酸マグネシウム、VCIPといった特殊なビタミンCの誘導体を使います。
ビタミンCが良いと聞くと、レモンパックなどをしたくなる人もいらっしゃるでしょう。ですが、普通のビタミンCを塗って紫外線を浴びると逆に色素沈着を起こします。私は自分で実験としてビタミンCを塗って日焼け用の紫外線ライトを当ててみたことがありますが、見事にビタミンCをぬった部分だけ色素沈着をおこしました。絶対にやめてください。
美白剤(ハイドロキノン・アルブチンなど)
メラニン色素の産生を強力に抑制する薬です。あらたなメラニン色素が産生されにくくなります。皮膚が生えかわるに従って徐々にシミが薄くなります。
トレチノイン
ビタミンAの誘導体で通常のビタミンAと比較にならない高い効果があります。トレチノインを塗ることで肌の生えかわりが早くなります。
シミの原因として肌の生えかわりが遅くなっていることに対して効果があるわけです。美白剤などと一緒に使用することで、メラニン色素を多く含んだ皮膚を綺麗な皮膚に生えかわらせる効果があります。肌が生え替わる際に組織の再構築がおこるので、小じわなどにも効果があります。
気をつけなければならないのが、トレチノインに対する効果にかなりの個人差があるということです。以前にトレチノインを使ってみたけれども、赤くなったり痛くなったりして使うのをやめてしまったというお話しをよく伺います。しかし、上手く使用することで優れた効果を出すことができるので、正しい使用法を理解し、しっかりと説明してくれるクリニックで治療を行って下さい。
αリポ酸ナノカプセルクリーム
人の体内でも合成される抗酸化物質です。クリームなどの外用剤に配合することで抗炎症作用、メラニン色素排出作用、コラーゲン・ヒアルロン酸産生の増強が期待されます。光や熱で変化しやすい為、当院ではナノカプセルと呼ばれるカプセル化技術を用いたクリームを使用しています。積極的にシミを落とすというよりも、レーザーなどの治療と組み合わせることで効果をより発揮できると考えられます。
肌に優しい成分ですので、シミの予防や肌質改善に長期間使用するのにも適しています。

シミの再発予防

シミはどの様な方法で治療しても、いずれまた出てくる可能性があります。なぜなら、皮膚の紫外線によるダメージ自体は完全には回復しないからです。そこで、再発予防がとても重要になります。再発の予防の方が、再発してから再度治療をするよりも簡単ですし、コストも安く済みます。
IPL、内服、外用などを組み合わせるのですが、シミの治療の際にどの様な経過をたどったかなどが再発予防法の選択に重要です。
キャンペーンやクーポンなどで安いところを探してクリニックショッピングをするかたもいらっしゃいますが、できるだけ信頼できる主治医をみつけて継続的な受診をすることをお奨め致します。

2019年1月20日美容皮膚科シミ,レーザー,美白

Posted by 中野 貴光