トレチノイン療法

トレチノインとは

トレチノインとは、レチノールの誘導体で、とても効果の強いビタミンAです。

表皮層での効果

・角化細胞に対して強い増殖促進作用があり、ターンオーバー(生え替わり)が早くなるので、表皮の中にあるメラニン色素が排出されることにより、シミや炎症後色素沈着がうすくなります。
しかし、生え替わる際に新しくメラニン色素が産出されると”新しいシミ”に置き換わるだけになってしまうので、通常は強力な美白剤である”ハイドロキノン”を一緒に使います。併用することにより、新しい美しい皮膚に生まれ変わらせる事が出来ます。
・表皮角化細胞間や角質にヒアルロン酸などの保湿成分の沈着を促す作用もあるので肌理(きめ)が整います。
・角質の剥離に伴い角栓もとれて皮脂の分泌も抑制されるため、にきびや毛穴の拡大にも治療効果があります。

真皮層での効果

・線維芽細胞のコラーゲン産生を促進させる効果により、皮膚に張りがでます。
・MMPというタンパク質分解酵素の産生を抑制するので、コラーゲンの量が増えます。
・細胞の分裂が早まるため、傷の治りを早くします。
・真皮乳頭層での血管新生が促進されるので、血行が良くなります。

このような有益な働きがある一方で、角質の剥離を促進させ、皮脂の分泌も抑制されるので乾燥もしやすくなりますから、適切な保湿を同時に行うことが大切です。

効果をまとめると、以下の表のようになります。

作用 適応
表皮 角質剥離
表皮の肥厚
ターンオーバー促進
保湿成分沈着
くすみ、シミ、肝斑、色素沈着
肌理(きめ)の改善、小じわ
にきび
傷の治りの促進
真皮 コラーゲン産生促進
皮脂の分泌抑制
真皮乳頭層の血管新生
皮膚の張りの改善
小じわ
にきび
傷の治りの促進

実際にトレチノインとハイドロキノンでシミ治療を行った症例

治療前

17日目

2ヶ月目

5ヶ月目

トレチノインとハイドロキノンを使用した症例です。
シミがきれいになるだけではなく、肌のダメージが修復されたことにより肌理(きめ)も整った状態になっています。
17日目にはシミがきれいになってきていますが、赤みが出ています。
この赤みは肌の生え替わりが促進されることによるものです。

当院でのトレチノイン治療

私は、このように素晴らしい効果を持つトレチノイン治療を日本に広めて下さった東京大学(2019年現在は自治医科大学形成外科教授)の吉村先生のもとで学び、積極的に治療を行い、多くの方の改善例を診てきました。
と同時に、効果が高いが故に、
使い方や濃度を細かくカスタマイズする必要があり、治療結果も様々で、副作用により途中で断念する方もいらっしゃいました。反応に個人差が大きいことが大きな理由です。
トレチノインは反応が強く出ると、角質の剥離作用により塗布部位の痒み、紅斑、熱感、皮むけの症状がでることがあります。トレチノインのみでシミ治療をする場合には、どうしても強く反応させる必要があり、痒みや赤み、皮むけなどの症状に対応しながら治療をすることになります。
そこで、当院ではシミの治療ではレーザーIPL治療をメインとしつつ、さらに良い効果を得るために副作用の出にくい低濃度のトレチノイン治療を取り入れています。補助療法としてマイルドなトレチノイン治療を行うことにより、強い副作用をできる限り抑えつつ治療効果を高め、合併症を減らすことが可能になります。
レーザーやIPLによるシミの治療は大変効果的ですが、炎症後色素沈着などを起こす可能性があります。日本人のシミ治療では特に炎症後色素沈着の予防・治療が重要となり、その為にトレチノインとハイドロキノンを配合したクリームを用いています。
総合的な治療をすることにより、治療期間が短くなり、コスト面でもメリットがうまれる相乗効果が期待できます。

2019年9月16日美容皮膚科シミ, シワ, 美容, 美白

Posted by 中野 貴光