イボ(尋常性疣贅)
イボとは
「イボ」は、皮膚から盛り上がっている小さな“できもの”一般を指す俗語です。
「イボができた」と言って受診されるものの中には、様々な異なる皮膚のできものが含まれています。
一般的なイメージの「イボ」は、手足などにできる「ウイルスが感染してできるイボ」で、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とよばれるものです。
ここでは、最も一般的な「イボ」である尋常性疣贅を説明します。
(他にも、ウイルス性の「イボ」としては「水イボ」がありますが、ウイルスの種類も治療法もことなりますので、別の病気として扱います)
イボの原因
イボは、ヒト乳頭腫ウイルスというウイルスの一種が皮膚に感染してできます。英語名はhuman papillomavirusで、略してHPVと書いたりもします。このHPVには多くの種類があり、ある種のものは性感染症(性病)である尖圭コンジローマに、他のある種のものは子宮癌の原因ウイルスとして注目されています。
HPVのうち主に2型(HPV2)が皮膚や粘膜の細胞に感染してイボになります。(その他HPV27やHPV57など)
イボのウイルスも正常で健康な皮膚には感染できないのですが、小さな傷があるとそこから皮膚に入り込んで、表皮の一番奥の基底層にある細胞に感染してイボをつくります。感染を受けた基底細胞は細胞分裂が活発になり、まわりの正常な細胞を押しのけて増殖します。
こうしてできた感染細胞の塊が、ウイルス性のイボの正体です。
このように、イボができるためには小さな傷を通してウイルス(HPV)が皮膚や粘膜に入り込み基底細胞に到達する必要があります。外傷を受けることの多い手足や、あるいはアトピー性皮膚炎の子供たちなどが引っ掻くことの多い肘・膝窩(しつか ひざうら)にイボができやすいのはこのためです。
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)にはウイルスを構成するDNAの違いにより多くの異なる型(遺伝子型と呼ばれます)があり、今までに150種類以上の型が見つかっています。
この型の違いによって、感染しやすい場所や、できるイボの種類(形や見ため)が異なりますが、最も普通に見られるのが尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)という手足にできるイボです。顔にできる指状疣贅(しじょうゆうぜい)や足の裏にできる足底疣贅(そくていゆうぜい)も、見た目は違いますが尋常性疣贅の仲間です。
イボ(ウイルス性疣贅)は、今まで書いてきましたようにウイルス(HPV)が感染してできる皮膚や粘膜の病気ですから「うつる」可能性があります。イボを触った手で別の部位(特に皮膚が荒れていたり、キズがある部位)を触ったりすることで広がるため、むやみに触らないようにしましょう。他者への感染力は強くないため、プールやお風呂などを控える必要はありません。
子宮頸癌やある種の皮膚癌が特定のHPVで起こる可能性が分かっていますが、普通のイボは全く違う型のHPVが原因ですので、普通のイボが癌になることを心配する必要はないでしょう。
ただし、一般の方が「イボ」と呼ぶ皮膚病には様々な種類の皮膚腫瘍が含まれています。時には悪性腫瘍であることがないとは言えません。
当院では、ダーモスコープという拡大鏡を用いて診断しており、悪性腫瘍の可能性がある場合には病理検査をおすすめしております。
イボの治療
イボの治療は、液体窒素を用いた冷凍凝固療法を基本的に行います。
一般的には液体窒素に浸した綿棒で行いますが、当院では顔面以外はスプレー式を用いています。スプレーの方が押しつける必要がないので痛みが少ないと言われています。
多発している場合には、冷凍凝固療法に加えてヨクイニンという漢方を内服することもあります。
治療過程で徐々に小さくなる場合もありますし、水疱やかさぶたが出来てポロッととれてしまうこともあります。一回の治療で治ることもありますが、多くの場合何回か治療を繰り返すことでイボがなくなっていきます。
足底疣贅(そくていゆうぜい)は皮膚に厚みがあるため治療に時間がかかることもあり、中には他院で半年以上かかり治らなくて受診する方もいらっしゃいます。その様な場合や何回も通院することが難しい場合などは、手術のように局所麻酔を行い、深くまで削り取る方法で治療をおこないます。
イボがなくなったと思っていても、ウイルスが同じ場所や別の場所に残っていて数ヶ月して再発することもありますし、時間がかかることもある病気ですが、根気よく治療していきましょう。イボかもと思ったら、大きくなる前、また広がる前に早めの受診をお薦めします。

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