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単純性血管腫(毛細血管奇形)

目次

単純性血管腫(毛細血管奇形)とは

単純性血管腫は、生まれたときからみられる平らな「赤あざ」の一つです。「ポートワイン母斑」と呼ばれることもあります。
以前から「単純性血管腫」という名称が広く使われていますが、現在の医学的な分類では、血管が増殖してできる「血管腫」ではなく、血管の形成異常である**毛細血管奇形(capillary malformation:CM)**に分類されています。[1]
皮膚の浅い部分にある毛細血管が通常より拡張しているため、皮膚がピンク色~赤色、暗赤色に見えます。
乳児血管腫(いちご状血管腫)とは異なり、基本的には生まれたときから存在し、自然に消えることはありません。

どんなところにできるか

顔、首、腕、脚、体幹など、全身のどこにでもみられます。
大きさも数cm程度のものから、顔や手足の広い範囲に及ぶものまでさまざまです。
多くは皮膚の色の変化だけですが、顔面に広範囲にみられる場合には、まれにSturge-Weber(スタージ・ウェーバー)症候群などに関連していることがあります。[1]
特に額や上まぶたを含む毛細血管奇形では、その分布などによって眼科や小児科などでの検査が必要となる場合があります。
当院では診察の結果、必要と判断した場合には適切な専門医療機関をご紹介します。

自然に消える赤あざとの違い

赤ちゃんには、生まれたときから額、眉間、まぶた、鼻の下、うなじなどに薄い赤色のあざがみられることがあります。
この中には「サーモンパッチ」「正中部母斑」「ウンナ母斑」などと呼ばれ、成長とともに自然に目立たなくなっていくと言われるものがあります。
一方、毛細血管奇形(単純性血管腫)は基本的に自然には消えませんし、「サーモンパッチ」「正中部母斑」「ウンナ母斑」なども必ず消えるわけではありません。
また、名前の似ている「乳児血管腫(いちご状血管腫)」は、生後数週から現れて急速に大きくなった後、数年間かけて自然に小さくなっていく性質があり、毛細血管奇形とは異なる病気です。
→ 「乳児血管腫(いちご状血管腫)」についてはこちら

赤ちゃんの赤あざには、それぞれ経過や治療方法が異なる病変があります。見た目だけでは区別が難しい場合もありますので、「生まれたときから赤あざがある」「赤みがなかなか消えない」といった場合には、一度専門医に相談することをおすすめします。

成長するとどうなるか

毛細血管奇形は自然に消えることはなく、体の成長に伴って病変の範囲も比例して大きくなります。
幼少期にはピンク色~鮮紅色で平坦なことが多いのですが、年齢とともに色が濃くなり、赤紫色や暗赤色になってくることがあります。
特に顔面では、成人になるにつれて皮膚が厚くなったり、表面が盛り上がったり、結節状になったりすることがあります。[2]
そのため、自然に消えることを期待して長期間経過を見るのではなく、治療を希望される場合には早めに専門医へ相談することが大切です。

治療について

毛細血管奇形(単純性血管腫)の代表的な治療は、色素レーザー(パルス色素レーザー:PDL)による治療です。[1][2]
当院では、血管性病変の治療に用いられるVbeamⅡ(VビームⅡ)という色素レーザーを使用しています。
→ 「VbeamⅡレーザー」について詳しくはこちら

色素レーザーは、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい波長のレーザー光を照射する治療です。
レーザーの光エネルギーが赤あざの原因となっている血管内のヘモグロビンに吸収され、熱エネルギーに変換されることで、異常に拡張した血管に作用します。
VbeamⅡでは595nmの波長のレーザー光を使用します。また、照射直前に皮膚表面を冷却する装置が搭載されており、周囲の皮膚への影響をできるだけ抑えながら治療を行います。
毛細血管奇形(単純性血管腫)に対する色素レーザー治療は健康保険の適用となります。

何回くらい治療すれば消えるか

治療効果には個人差があります。
病変の色、血管の太さや深さ、部位、年齢などによってレーザーへの反応は異なり、1回の治療ですべての赤みがなくなるわけではありません。
一般的には複数回のレーザー治療が必要になります。[2]
治療によってかなり目立たなくなる方がいる一方、繰り返し治療しても赤みが残る場合や、一度薄くなった後に時間の経過とともに再び色が濃くなってくる場合もあります。
そのため、治療の目標は必ずしも「完全に消すこと」ではなく、できるだけ赤みを薄くし、目立ちにくくすることと考えることが大切です。

治療時期について

毛細血管奇形に対する色素レーザー治療は、乳幼児期から行うことができます。
乳幼児では、
・皮膚が薄くレーザー光が病変まで届きやすい
・病変の面積がまだ小さい
・レーザー照射後の皮膚の治癒が比較的早い
・炎症後色素沈着が起こりにくい傾向がある
など、早期に治療を行う利点があると考えられています。[2]
「血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022」でも、1歳未満からレーザー治療を開始することで有効性が高くなる可能性があり、できるだけ早期に治療を開始することが選択肢の一つとして提案されています。[1]
ただし、治療効果には病変の部位や色調、深さなどによる個人差があり、「早く治療を始めれば必ずきれいに消える」というものではありません。
当院では、赤ちゃんの月齢や病変の場所・大きさ・色調などを診察したうえで、治療を開始する時期を判断します。

レーザー治療後の経過と注意点

レーザー照射直後には、治療した部分に赤みや腫れが生じることがあります。
照射条件によっては、皮膚が紫色になる「紫斑」がみられることがあります。通常は時間の経過とともに改善していきます。
また、一時的な色素沈着や色素脱失、水疱、かさぶたなどが生じることがあります。
非常にまれですが、強い炎症が起こった場合や、照射部位を掻き崩してしまった場合などには、瘢痕が残る可能性もあります。[2]
治療後の皮膚は刺激を受けやすくなっていますので、こすったりせず、保湿や紫外線対策を行うことが大切です。
眼の近くなど、病変の場所によっては安全性の観点から当院でレーザー照射を行えない場合があります。

乳児血管腫(いちご状血管腫)との違い

「単純性血管腫」と「乳児血管腫」は名前が似ていますが、医学的には異なる病気です。

毛細血管奇形(単純性血管腫)

生まれたときから存在することが多く、基本的には自然に消えることはありません。
現在の医学的な分類では「血管腫」ではなく、血管の形成異常である「血管奇形」に分類されています。

乳児血管腫(いちご状血管腫)

出生時には目立たないことも多く、生後数週から現れて急速に大きくなり、その後数年間かけて自然に小さくなっていく性質があります。
乳児血管腫では、病変の場所や大きさ、増殖する速度などによって、レーザー治療だけでなくβ遮断薬などによる薬物治療を行うことがあります。
両者は経過も治療方法も異なりますので、赤ちゃんの「赤あざ」がどちらなのかを正しく診断することが重要です。

→ 「乳児血管腫(いちご状血管腫)」について詳しくはこちら

単純性血管腫(毛細血管奇形)のよくあるご質問

単純性血管腫は自然に消えますか?

基本的には自然に消えません。
乳児血管腫(いちご状血管腫)やサーモンパッチなど、自然に薄くなる赤あざもありますが、毛細血管奇形(単純性血管腫)は自然消退しない病変です。
年齢とともに色が濃くなったり、特に顔面では成人期以降に皮膚が厚くなったり盛り上がったりすることがあります。

生まれたばかりですが、すぐに受診した方がよいですか?

赤あざの種類を確認するためにも、一度診察を受けることをおすすめします。
すべての赤あざにすぐレーザー治療が必要というわけではありません。
赤ちゃんにみられる赤あざには、毛細血管奇形、乳児血管腫、サーモンパッチなどがあり、治療が必要かどうか、適切な治療開始時期も異なります。
まず診断を行い、そのうえで治療が必要か、いつから治療するのがよいかを検討します。

レーザー治療は何歳からできますか?

乳児期から治療することができます。
国内の診療ガイドラインでも、1歳未満から治療を開始することで治療効果が高くなる可能性があり、早期治療を選択肢の一つとして検討することが提案されています。[1]
ただし、早く開始すれば必ず完全に消えるというわけではありません。
病変の場所、大きさ、色調、赤ちゃんの月齢などを確認して治療時期を決めます。

レーザー治療は1回で消えますか?

通常は複数回の治療が必要です。
毛細血管奇形の色や深さ、血管の太さ、場所などによって治療効果には個人差があります。
1回でかなり薄くなる場合もありますが、複数回治療しても完全には消えない場合もあります。
診察時に病変の状態を確認しながら、治療の見通しについてご説明します。

レーザー治療は痛いですか?

レーザー照射時には、輪ゴムではじかれたような瞬間的な痛みがあります。
VbeamⅡには照射直前に皮膚を冷却する装置が搭載されており、皮膚表面を保護しながら治療します。
小さなお子さんでは年齢や病変の大きさ、照射範囲なども考慮しながら治療を行います。

レーザーを当てた後、紫色になりますか?

照射条件によっては紫斑が生じることがあります。
レーザーが血管に反応した結果、照射部位が赤紫色~紫色になることがあります。また、赤みや腫れがみられる場合もあります。これらは通常、時間の経過とともに改善していきます。

レーザー治療で完全に消すことができますか?

完全に消えるかどうかには個人差があります。
色素レーザーは毛細血管奇形に対する代表的な治療ですが、すべての病変を完全に消すことができるわけではありません。[2]
病変の場所、色調、血管の深さなどによって治療への反応が異なります。
「完全に消す」ことだけを目標とするのではなく、できるだけ赤みを薄くして目立ちにくくすることを目指して治療を行います。

治療は健康保険が使えますか?

毛細血管奇形(単純性血管腫)に対する色素レーザー治療は健康保険の適用となります。
また、乳幼児医療費助成制度(マル乳)、義務教育就学児医療費助成制度(マル子)、高校生等医療費助成制度(マル青)などの対象となる場合には、各制度に応じた医療費助成を受けることができます。

顔に単純性血管腫があります。ほかの病気が隠れていることはありますか?

多くは皮膚だけの病変ですが、病変の分布によっては他の病気との関連を考える必要があります。
特に額や上まぶたなどを含む顔面の毛細血管奇形では、まれにSturge-Weber(スタージ・ウェーバー)症候群に関連している場合があります。[1]診察で病変の分布などを確認し、必要と判断した場合には眼科や小児科などの専門医療機関をご紹介します。

赤ちゃんの赤あざが気になる方へ

「生まれたときから赤いあざがある」
「自然に消えるのか知りたい」
「レーザー治療を始めた方がよいのか迷っている」
このような場合には、一度ご相談ください。

赤ちゃんのあざは、見た目が似ていても経過や治療方法が異なる病変があります。
赤ちゃんのあざには、自然に薄くなるものから早期の治療を検討した方がよいものまであり、その見極めには専門的な診断が必要です。
当院では、形成外科専門医・レーザー専門医として、小児のあざ・血管性病変の診療およびレーザー治療を専門的に行っています。

特に小さなお子さんでは、治療が必要かどうかだけでなく、治療を開始する場合の時期についても検討することが大切です。
お子さんの赤あざが気になる場合には、遠慮なく当院にご相談ください。


参考文献・参考資料

[1] 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班:血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022 第3.3版.

[2] 野村 正,大﨑健夫,大澤沙由理ほか:小児を対象とした毛細血管奇形(単純性血管腫)に対する色素レーザー治療.日本レーザー医学会誌.2021;42(1):18-22.

[3] 公益社団法人 日本皮膚科学会:皮膚科Q&A「アザとホクロ 単純性血管腫に対してはどうすればよいのでしょうか?」


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執筆者

医学博士。日本形成外科学会認定形成外科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医、日本熱傷学会認定熱傷専門医、日本手外科学会認定手外科専門医。
4つの領域の専門医資格を活かし、高度な医療を提供。
特に小児のレーザー治療に注力しており、医学的根拠(エビデンス)に基づいた確かな技術と、子どもに安心感を与える優しいアプローチを両立。

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